猫ひっかき病[CSD:Cat Scratch Disease]とは
病原体
バルトネラ菌(Bartonella henselae)
ネコノミが媒介する細菌で、日本の飼い猫でも7.2% (2))が保有しているという報告もあります。
人への感染源となりうる動物
[イヌ・ネコ]
症状
数日から2週間ほどの潜伏期間の後、受傷した部分の丘疹や膿疱、発熱、疼痛と、数週間から数ヶ月続くリンパ節の腫脹があります。発症した人の約0.25%に脳症を併発することもあります。脳症は、リンパ節腫脹の1~3週間後に、突然の痙攣発作や意識障害で発症します。
感染経路
感染したネコやイヌによる咬傷やひっかき傷、感染ノミによる咬刺によって、バルトネラ菌が人の体内に侵入し、感染します。
病原体を媒介する動物
[ノミ(ネコノミ)]
ネコとネコの間、ネコとイヌの間の感染を媒介しますが、ノミから人へ直接病原体が感染する場合もあります。
治療するには
- 軽度のリンパ節腫大症例では、無治療で自然治癒を待ちます。
- 定型的な本病に対して抗菌薬の投与が試みられることがありますが、高い治療効果を示す抗菌薬は見出されていません。
予防するには
- 定期的なペットのノミ対策を行いましょう。
- ネコやイヌの爪は、常に短く切っておきましょう。
- 引っ掻かれたり咬まれたりしないよう、ネコやイヌを過剰に興奮させないようにしましょう。
- 飼い主やスタッフに感染が推測される状況ならば、医師への相談をすすめてください。
ペットの場合
症状
感染したネコやイヌは、菌血症を起こしますが、特別な症状を示しません。
治療するには
通常無症状で保菌状態であるため治療対象にはなりません。
予防するには
ノミの定期的な駆除・予防により、本菌の動物間での循環サイクルを遮断します。
(1) Tsukahara M. Cat scratch disease in Japan. J Infect Chemother. 2002;8(4):321-325.
(2) Maruyama S et al. Prevalence of Bartonella henselae, Bartonella clarridgeiae and the 16S rRNA gene types of Bartonella henselae among pet cats in Japan. J Vet Med Sci. 2000;62(3):273-279.