エキノコックス症[第4類感染症]

エキノコックス症とは

病原体

多包条虫(Echinococcus multilocularis)

テニア科エキノコックス属に分類される条虫で、本来イヌ科の動物を終宿主としています。中間宿主となる人の体内で嚢胞をつくり、次々に全身の臓器に転移します。

人への感染源となりうる動物

[キツネ・イヌ]

イヌ科の動物から次世代の感染源となる虫卵が排泄されます。野生動物では各種のキツネ、ペットではイヌが問題になっています。

症状

感染して5~10年は無症状期で自覚症状がありません。その後、嚢胞が大きくなるにつれ、肝臓内の胆管・血管が塞がれ、肝機能障害が進みます。嚢胞が胸腹壁や周囲の臓器を圧迫し、疼痛や違和感などの症状が現れはじめます。末期には重度の肝機能不全となり、黄疸や腹水、浮腫などが現れるとともに、発育中の嚢胞の一部が崩壊し、多包虫が血流に乗って肺や脳、骨髄など、さまざまな臓器に転移します。

放置すると90%以上が死亡します。

感染経路

経口感染

感染したキツネやイヌは糞便の中に多量の虫卵を排泄します。これが本来の中間宿主である野ネズミに食べられると、主に肝臓で幼虫が増殖します。人が誤って虫卵を飲みこむと肝臓などに幼虫が寄生します。

治療するには

患部の外科的摘出が唯一の根治的治療法です。切除できない場合、死亡率は5年で70%、10年で94%に達します。

予防するには

流行地での居住、旅行に際してキツネ、イヌなどとの接触や、虫卵に汚染した可能性のある水、山菜などの摂取を避ける事が大切です。また、流行地においては、飼いイヌの検便を確実に行い陽性の場合は、獣医師の立会いの下にプラジクアンテルによる駆虫を実施することが重要です。(1)

ペットの場合

症状

イヌは感染した野ネズミを食べることで感染し、ほとんどの場合、不顕性感染です。感染したイヌは糞便中に多量の虫卵を排泄します。

病原体を媒介する動物

[野ネズミ]

中間宿主(ネズミから人への感染はない)

診断するには
  • 確定診断は、虫体検査、糞便検査(遺伝子検査、糞便内抗原検査)により行われます。
  • エキノコックス症は4類感染症です。エキノコックス症と診断した、もしくは疑い例に遭遇した獣医師は、速やかに保健所へ届け出る義務があります。
治療するには

成虫に対してはプラジクアンテル 5mg/kgの投与でほぼ100%の駆虫効果があります (1) 。

予防するには
  • イヌに中間宿主である野ネズミを食べさせないことが予防上肝心です。
  • 流行地域ではイヌを放し飼いにしないようにしましょう。


(1) 厚生労働省(2004)「犬のエキノコックス症対策ガイドライン2004 - 人のエキノコックス症予防のために - (p.34)」